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○車内

 車内はかなり新しくきれいである。しかし、車内に下がっているつり革の数の多さは、それだけの人を詰め込もうといった意図が感じられ、快適な車内を目指しているとは思えない。天井は低いが、明るい色彩で圧迫感はない。しかし、限られた空間の中に、いじましく吊り広告がなされていて、閉じ込められた空間において、一定の時間、強制的に広告を見せられるのは、不快を感じさせられる。窓の形状は、路線バスなどとほぼ同等であるが、観光バスや高速バスが眺めを配慮した窓が工夫されている様に、路面電車沿いのきれいな街を眺めるのにふさわしい窓といった工夫も欲しい。

○学習院下停留所

駅部としてかなりの利用者がいるはずであるが、周辺の街には駅部の影響はほとんどなく、駅と街との一体感が感じられない。そのため、この都電荒川線が、地域交通の足として地域から非常に大切にされているといった姿は、この写真からは見ることができない。道路と完全に分離され併走する専用区間であるが、道路が電線類の地中化がされている分、軌道における電線類が、汚く見える。道路空間における美装化や沿道景観に対する配慮がまちづくりにおいて取り組まれつつあるが、軌道は道路と同等かそれ以上の交通の軸であるとともに、電車の窓から眺める人の数も道路利用者の数に負けないものであるが、軌道空間の質に対する取り組みや軌道空間沿いの景観に対する配慮は、ほとんどなされていない。

アーバン・インフラとまちづくり研究会 現地調査 報告

○新目白通り、面影橋停留所付近

広幅員の新目白通りの中央を都電荒川線が走行している。道路の中央部を路面電車が走る併用区間であるが、ガードレールで完全に分離され、専用軌道化している。電車としては自動車と混在していないことから、走行しやすいものとなっている。沿線のまちは、中高層のマンションが林立している。駅部ではないので、路面電車の利用面から見た街への影響は小さいのかもしれないが、路面電車が走っているので、この沿道の街は魅力的だとは言いにくい。広幅員の道路であることから道路を挟んだ街どうしの関係は希薄になっているが、線路によりいっそう分断されているように見える。道路は電線類の地中化がなされ、すっきりしたものとなっているが、線路部の架線が錯綜し、せっかくの道路における電線類の地中化の効果が相殺されている。線路空間は道路の中ではかなりの面積を占めているが、貴重な街中の空間として、生かしきれていない。

NO 訪問日 所在地 プロジェクトサイト 備考
SS-004 2011/1/22 東京都 都電荒川線を歩く(その1)早稲田〜庚申塚

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○都電荒川線早稲田駅

都電荒川線の起点の停留所。周辺に大規模な町があるわけでもなく、地下鉄等の他の公共交通機関との結節点でもない、不思議な停留所である。過去には江戸川橋方面に伸びる線の中間駅であったが、昭和43年に廃止され、端末駅となった。終端の駅といっても広幅員の道路の中央にあることから、歩道からはアクセスしにくく、せっかくのターミナルでありながら、まちの拠点とはなっていない。地方ローカル線の駅が町にとって重要な拠点になるのに対して、荒川線の停留所の利用者はかなり多いはずであるが、周辺はまちの顔をもつに至っていな。路面電車が街に与えるインパクトが弱いのか、まち側が路面電車のインパクトを生かしきれていないのかは、わからない。